天命は反転し、志はどこまでも拡散する

「死なないための家」

僕の実家からほど近い、三鷹市の東八道路沿いに、
カラフルな立方体やら円柱やらを組み合わせた
奇妙な形のアパートがあります。

この住宅の名前は「天命反転住宅」。

おそらく、
その名を聞いたことがある人もいるでしょう。

デザインをしたのは故荒川修作さんです。

この住宅はまたの名を
「死なないための家」というようです。

公式サイトによると、
この住宅の名前の由来はこうです。

私たち一人一人の身体はすべて異なっており、日々変化するものでもあります。与えられた環境・条件をあたりまえと思わずにちょっと過ごしてみるだけで、今まで不可能と思われていたことが可能になるかもしれない=天命反転が可能になる、ということでもあります。荒川修作+マドリン・ギンズは「天命反転」の実践を成し遂げた人物として、ヘレン・ケラーを作品を制作する上でのモデルとしています
→三鷹天命反転住宅HP(http://www.rdloftsmitaka.com/about/)

つまり、自らの身体には、
自分の思い込み以上の可能性が
秘められていることを知ることができる
という意味で、
この住宅は「天命反転」であり、
「死なないための」家なのです。

 

「建築」の可能性

僕が実家の近所にあるこの家のことを
思い出したきっかけは、
知らぬ人はいないであろう
脳科学者の茂木健一郎さんによる対談集
『芸術の神様が降りてくる瞬間』
(光文社、2007年)
です。

この本の中に、茂木さんと荒川さんとの
対談が載っています。

これがすこぶる面白いのです。

その面白さは、本書に乗っている、
他の対談者との対話が
どうでもいいくらいにちっぽけに
見えてしまうほどです。

他の対談では、茂木さんと対談者とが
同じくらいの割合で
対等に話し合っている感じであるのに、
荒川さんとの対談では、
普段から割と歯に絹着せぬ発言をしている
あの茂木さんが、
終始圧倒されているのです。

しかしでは、何が面白いのかと問われれば、
これが言葉に表すのがなかなか難しいから困ります。

それは次のこの荒川さんの言葉に
集約することができるでしょう。

「建築」って見てみてよ。ものすごく素晴らしい内容を持っているんだよ。生命とか、身体とか、時間とか、空間とか、いろいろ。ものすごく素晴らしい言葉なのに、こんなに小さく使ってるの。「建築する」って、下に動詞を置いたらね、もっとすごい言葉になる。それで、その上か下かに「身体」をつけたら、「建築する身体」ってなる。それを私はつくろうとしているの。
→『芸術の神様が降りてくる瞬間』p304

ここでの対話も同じでした。

荒川さんは、茂木さんとの対話を通して、
彼の建築と同じく、生命とか、身体とか、
時間とか、空間とか、いろんなものを体現しようと
全身全霊で話していたのです。

 

生まれた理由を少しは考えてみたまえ

建築にせよ、絵画にせよ、
僕が取り組む文筆活動にせよ、
何かを「つくる」という行為の究極は、
この点にあると僕は感じています。

そしてこれは、
志というものの行き着くところでもあります。

志とは、
いわゆる明治の志士たちが抱いたような、
世の中を変えてやるといったような
単純な闘争心とは全く違います。

そういうものは、頭の中で善悪を割り切って考えた、
独りよがりの思い込みに過ぎません。

志とは、そんな偏屈者が抱くような想いではありません。

志とは、身体全体で感じ取ったことから
自然と湧き出るような、身の丈にあった想いです。

だからこそ、志ある人は、
己が感じ取り、湧き出たものを、
己の表現手法でもって、
全身で表現しようとします。

そういう意味では志は、
感性が研ぎ澄まされた者しか
抱くことができません。

でも、僕らが生まれてきた理由というものを、
少しは考えてほしいのです。

いや、理由というのはさしてないのかもしれません。

だけれども、せっかく生まれてきたというのに、
たいしてこの世を楽しむこともなく、
また感じたことを誰かに共有するということもなく、
みすみす死んでいくのでしょうか?

だとしたら、あなたの生というのは、
本当にいかほどの価値もないでしょう。

しかし、あなたの感じ取ったことというのは、
あなたが思っている以上に、
世界にとって価値あるものなのです。

誰かがあなたの考えをバカにしたとしても、
そんなものはクソでも喰らわせておけばいいのです。

それよりも、君の感じたことを
しっかりとありのままに表現してあげることです。

体裁やら対面を取り繕って、
小綺麗にまとめないことです。

変わり者だとかなんだとか言われようが、
感じたことをしっかりと表現し続けることこそが、
この世に生を受けたものとしてなすべきことの
唯一のことなのです。

 

志の基礎は感じたことを表現すること

荒川さんの作品に関していえば、
三鷹天命反転住宅にしても、
岐阜県にある壮大な養老天命反転地にしても、
どれも奇怪で変わった建造物でしょう。

だけれども、そこには
荒川さんの感性だからこそ作られた
「場」があり、メッセージがあります。

そして、荒川さんならではの価値があります。

文章にしても、映像にしても、商品にしても、
はたまた見る者に感動を与えるスポーツのような
エンターテイメントにしても、
結局必要なことはそういうことでしょう。

与えられた「場」というものに対して、
僕らがいかに対応するかということにおいて、
価値は生まれ、世界は作り直されます。

そうした行動の軸となるのが感性であり、
それが伸びていくところが一筋の志です。

だから志とは、
内面においては一貫しているのですが、
外面においてはどこまでも拡散しています。

それはちょうど、荒川さんが
「建築」というものにおいて、
生命や身体や時間や空間など
様々なものを表現したようにです。

僕自身、文章で
こうした志を体現できればいいと思っています。

僕自身が感じたことを全身全霊で文章に表現し、
同時にそれをできる仲間を
この世界で増やしていくというのが、
僕のこの世界での役割の一つであると感じています。

もっとも、それはまだまだ
荒川さんには遠く及ぶところでは
ないかもしれません。

この文章自体、荒川さんの対話から
感じ取ったことの半分も
表せているようには思えません。

だけれども、目指す一つのところとして
荒川さんのような行動があると
僕は感じています。

そして、こういうことを語り合い、
築きあえるような仲間を一人でも多く見つけ、
また僕自身の手で育みたいのです。

 

あなた一人に向けて小説を書きます
(テイラード小説)

あなたと直接話し、その印象を基に
今のあなたに必要だと感じた物語を書いています。

お代は、書きあがった小説を読んでいただいた後に、
あなたが払いたい分だけ払っていただければ結構です。

もちろん、読んだ小説が気に入らなければ、
お代はいりません。

ご依頼の連絡は右の申し込みフォームにメールを記入、
またはTwitter、FacebookのDMまで。

→詳しくはこちらから

この記事が役に立ったと思ったら、
TwitterやFacebookなど、SNSでシェアしていただけると嬉しいです。

1件のコメント

返信を残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です